武士はなぜ誕生したのか?

日本史集中講義―点と点が線になる (祥伝社黄金文庫)日本史集中講義―点と点が線になる (祥伝社黄金文庫)
井沢 元彦

祥伝社 2007-06
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この本より要約。

平安時代の日本は律令体制の国家だった。
平安中期以降、律令制度が変化してきた。
なぜかというと、戦争がなくなったからだ。


平安京を造った桓武天皇の時代は、東北は未開の地で、
蝦夷という民族が朝廷に対して反抗を繰り返していた。
蝦夷を征伐するための将軍、「征夷大将軍」が生まれる。


征夷大将軍として有名な坂上田村麻呂の活躍などによって
東北地方の異民族はほぼ駆逐される。
そして朝廷は、北海道を除く本州、四国、九州を支配する。


これによって異民族に対する戦争は終わりを告げる。
ここで奇妙な変化が起こる。
安政府、つまり大和朝廷が、軍備を廃止しはじめた。


兵部省(今でいう防衛省)はあるけれど、兵隊は一人もいない状態となった。
刑部省(今でいう警察)からも、人がいなくなった。
兵部省刑部省(今でいう軍事と警察)は、もはや必要ないと考えたということ。


廃止といっても、法律を改正して廃止するわけではなく、
日本人お得意の「有名無実」という形をとった。


しかし、警察を廃止すれば犯罪がなくなるということはない。
犯罪が巷に跳梁跋扈するのは、自然の成り行き。
平安後期の日本に、それが起こった。


そこで設けられたのが、令外官である検非違使だ。
令外とは「律令の外」という意味で、本来の律令にはない官職ということ。
なぜ律令にない官職を作ったかというと、本来の律令である刑部省が機能していなかったから。


ところが問題なのは、検非違使というのは今でいう警視庁であって、
都だけの存在ということ。地方には警察も軍備もないという状態は変わらない。


治安の悪い国はどうなるかというと、みんなが武器を持つようになる。
平安時代は基本的に警察すらなく、あったとしても非常に力が弱い。
だから、夜盗強盗のような類に対抗できない。


それらに対抗するには、自ら武器を持たなければならず、
持っているだけでなく、その武器を的確に、有効に使えなければいけない。


武器を所有し、なおかつ武術を磨かなければいけない。
実は、これが武士の興りである。


治安の悪いところは住民が武装するようになる。
これは古今東西ごく当たり前の話。西部劇に出てくるカウボーイなどもそう。
このように時代は全く違うが、西部劇のガンマンと日本の武士というのはコンセプトがよく似ている。


七人の侍』という黒澤時代劇を、『荒野の七人』という西部劇にリメイクしても違和感がないのはそのため。


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