PEOPLE 阿川佐和子・森永卓郎のとことんNIPPONウオッチャー

20080706

ゲスト:山田五郎

                                                                                                        • -

最近一番面白かったのは、歌を作りました。作詞作曲。


森永 誰が歌ってるんですか?


中川翔子しょこたんと一緒に僕が歌ってます(笑)


森永 いーなー。


阿川 しょこたん好きなんですか?


森永 しょこたん秋葉原で人気ぶっちぎりトップ。
    オタの人の心が分かるアイドルは彼女しかいません。

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阿川 私はそんなに絵画に詳しいわけじゃないけども、
これくらいのね、絵を見るのは嫌いじゃないんだけども、
美術館に行くたびに、どう見ていいのか分からないとか、
どこを面白いと思っていいのか本当のところよく分からない。
なんか日本はやっぱりあのルノワールとかあそこらへんが人気が高いから
みんなと同じような辺りを押さえとけばいいかなくらいにしか分かってなくて

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元々、大学でやってたのが西洋美術史だったんですよ。
でも僕が行ってた大学に西洋美術の専門の学科がなかったんで、
それでオーストリアに行ってやってたんですね。
ただ帰ってきて就職しちゃったんですけど。


阿川 オーストリアと言えばウィーンですか?


ザルツブルク


阿川 ザルツブルクに居たんですか。サウンドオブミュージックの。


三日居るととても良い所です。


阿川 もっと長く居るとどうなるの?


退屈で退屈で(笑)


森永 私もね、実はウィーンに。


阿川 実は帰国子女なのね。


森永 ウィーンの人ってとても陰湿で嫌な奴なんですけど、
    ザルツブルクいくと明るいんですよ。

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ウィーンとその他オーストリアは仲が悪いの。
有名な話で、大学も総合大学って四つしかないんですけど、
ウィーン大学対他の三つっていう。
ウィーンが突出して街として、もうでかいんですよ。
んで、ザルツブルクはどちらかと言うとミュンヘンに近いんですよ、ウィーンよりも。
で、西の方だからまず飲むお酒はビールですよね。


森永 ウィーンはワイン飲みますよね。


で、民族もほとんどゲルマン人ですし、訛りもほとんどバイエルン訛りなんですよ。


第一次世界大戦のあとにハプスブルク帝国が崩壊したあとに
ドイツ連邦に入るかオーストリア共和国に入るかで国民投票みたいのやってですね、
ザルツブルグだけ九十何パーセントがドイツに入りたいっていう、ときがあるんですよ。
だからどちらかというと、バイエルンとかの方にシンパシーがある。

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ずっと美術史でやりたいことっていうか言いたいことが一つだけあって
それは美術は全然偉いもんでもなければ難しいもんでもないっていうことなんですよ。
なんか美術っていうとね、教養みたいな、
お勉強みたいになってるけど、釣りとかゴルフとかと同じ趣味の一個だと、
これは暮らしを楽しむためにそもそもあるんであって、
面倒臭くするためにあるんじゃないよっていうことを言いたかったんですよ。

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フィレンツェ大聖堂の落書き問題)


確かにいいことだとは思わないですよ。
よくないと言うことは大前提としてありますけど、
あまり目くじら立てるのもどうかなって思ってるんですよ。


もちろん落書きはよくないことだけれども、
なにか美術品って触っちゃいけないものとか傷つけちゃいけない、
でそういう世界遺産とか権威付けをして崇め奉るものだみたいに
思ってる風潮には僕はあまりこう賛成じゃなくて。

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彫刻を触るっていうのは実は鑑賞として実に正しい鑑賞なんですよ。
ただ触りすぎちゃうと酷いことになっちゃう。
例えば、ナポリの博物館にですね、美しい尻のヴィーナスってのがあるんですよ。
お尻が綺麗だっていうんで、みんなお尻触るもんだから、
お尻のとこだけ黒くなった(笑)
びんずる様の頭じゃないんだから(笑)
でもそんぐらいの物だと思うんですよ。

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僕、美術館の学芸員になりたかったんですよ。

よく当時、学芸員の間で、大して面白くもないジョークにね、
大博物館っていうのはエジプトとかギリシャとかから盗んできたもんばっかりっていう、
要するに泥棒倉庫じゃないかと、いうのがあって。


そういうとイギリス人はね、イタリア人とかギリシャ人とかに
まかせておいたら全部だめにしちゃうじゃないかっていう話が
当時よく言われましたですね。

でね、これイギリス人が言うのも一理あるなと思ってたんですね。
なんですけども、ある日ローマに行って歩いてたら
ベルニーニの彫刻がそこら中にあるんですよ。
トレビの泉のうしろの方にあるのもあれベルニーニの彫刻なんですよ。
そこで立ち小便してた酔っ払いが居たんですよ。イタリア人の。
何の気なしに、これやめた方がいいんじゃねえかって言ったら
そのイタリア人、珍しく英語ができて俺の言ったこと分かってる(笑)
何だって反応してきたから、
お前そういうことするからイギリス人に馬鹿にされるんだって言ったら
酔っ払いがね、イギリス人はこういうの作れないからそういうこと言うんだ、ってね(笑)
俺たちはこんな物いくらでも作れるんだ、って。
壊れたら作り直せばいいじゃねえかって言われたわけ。
酔っ払いの戯言なんですけど、結構それが凄くショックで。


どっちがかっこいいかって言ったら、
他所から持ってきてね、博物館に飾ってね、触れないようにしてね、
教養にしちゃうよりね、普通の暮らしの中にね、美術品があってね、
当たり前のように子供が登ってね、酔っ払いが小便してたりと、
そういう暮らしの中に美術品があるほうが全然豊かじゃんと思って。

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森永 あの、一回ね、ローマに出張で行ったんですよ。
で、仕事びっちリ詰められてて、
でほら、日本人だと関係各所にお土産買って帰んないといけないじゃないですか。
で、ネクタイ屋さんに入ってね、
何でもいいから十本くれって言ったらもう
そこのネクタイ屋のオヤジがキレちゃったんですよ。
もう湯気出して怒ってて、てめえ俺が一生懸命作ったネクタイ何でもいいから十本とは
何事だって言って凄く怒ってるんですよ。
要するにイタリア人は、どんなブサイクな男でも自分のTPO考えて
このネクタイは似合うかとかどこに行くときに合うかとか一生懸命考えて一本買っていく。
お前は見もしないで買う気かっていう。
そんなこと言ったって時間がなかったんで、
しょうがないんで十五本くらい、こう考えてるふりをして
適当に10本かって帰ってきたんです。
イタリアの人たちってみんなアーティストなんですよね。

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美術品っていうのは暮らしの中で朽ちていって、
また新しく作られるっていうもので、
永遠に保存するっていうことが、大切な側面もあるけど、
第一義ではないんじゃないかって気がします。
大事には扱った方がいいけど。

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阿川 私、昔アメリカのワシントンDCのスミソニアン博物館に行ったときね、
幼稚園みたいな所でバイトしてたんです、無料バイト。
でその3、4歳の子供達に美術館に今日は行って、
何見るの?って子供達が言うと先生が、今日見る絵は抽象画ですって言って、
3、4歳の子供達が抽象画って分かるのかなとか思いながら、私も付いていった。
最初の絵の前にたどり着く前に先生が説明するの、
今日みんなが見る絵の中にゴキブリがいる、なぜならば書いた絵描きさんが
何日もかけて書いてるうちにある日朝起きたらゴキブリがベタっとくっついて
とれなくなっちゃって、どけようと思ったんだけど面倒臭いから
上からペイントしちゃったんで、今日見る絵の中にはゴキブリが
潜んでいるからみんなで探しに行こう、とか言って。
それでコックロッチコックロッチとか言って、その絵の前に立って
みんなで探すの、結果的には何分もかけて探した挙句、
日本からきたボランティアの阿川が見つけたんですよ。

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あの、必ず値段聞くんですよ。
あれやめよう、と思うんですよ


阿川 やめなさい、森永さん。


機械式腕時計が好きで時計の原稿よく書くんですけど、
必ずまず最初に値段の話になるんですよ。
それは、その分野に興味がない人が
ある物の価値を判断するときに、
お金しか判断基準がないからね、
ある意味仕方がないことではあるんだけども、
同時にこれほど意味のないことはないんですよ。

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あとそれから、誰が書いた。
ピカソって言うとなんかすごいもんじゃないかとか思うとか、
だからまずそういうのを一切なくして見て、で、見てくと本当に、
例えばお茶の道具やなんかと一緒で
なんとなく分かってきますよ。なんとなく分かってくるし
なんとなく自分の好き嫌いっていうのもできてくる。数ですよ。

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阿川 ニューヨークの美術館でピカソ展をやっていて
ピカソと女たち」っていう特別展だったんですよ。
ピカソは女癖って


最悪ですね。この本でも詳しく書きましたけど、


阿川 どの、自分の付き合った女の子も同じベッドに横たわらせて
その絵を描くっていうのが趣味だったから、
同じ構図で、みんな同じように並んでるんだけど、全部違うの。
それでこの女とは何年付き合ったとか、
一番好きだったのはこのじゃじゃ馬の女だったとか、コメントが書いてあんの。
絵の評価なんて何も書いてないの。
ああいう展示やってくれれば面白いのに。

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森永 ピカソは付き合ってるおねえさんによって作風も変わりますよね。
    わたし恋愛関係になると詳しいですよ。


恋愛経済学の人ですから、日本のレオナルド・オルバンと言われる男ですからね(笑)

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一番女癖悪いのはピカソですよ。悪いだけじゃなくて最悪ですよ。
ピカソの名言の「女は女神かドアマットかどちらかだ」っていうんですけど、
口説くときには女神扱いです、で、飽きたらドアマットのように踏みつけ、
もうその後処理が酷い(笑)
女好きはいっぱいいるんだけど。


阿川 普通女好きは後処理いいよ。


はい。ピカソは酷い。
だからピカソに関わった人はほとんどの人は心を病んでるか自殺して、
十年くらい前に「サバイビング・ピカソ」っていう映画とかあったんですよ。
直訳すると、「ピカソを生き延びて」っていうんですよ。
ピカソに引っかかって唯一、被害が少なかった
フランソワーズっていうのがいるんですけど、すぐ逃げたんですよ。
その彼女の話なんです(笑)
だから、そのくらいピカソにひっかかったらろくな事にならないっていう。


森永 画家ってあの、生きてるときって割とみんな貧乏ですけど、
    ピカソだけは結構金持ちだったんですよね。


長生きしましたからね。
あとまたその女性を踏み台にして、ロシアバレエ団のオルガ・コクローヴァ
っていうバレリーナと結婚したんですけど、そこを足がかりにして
上流社会と渡りをつけて。


森永 女性を踏み台にして出世するって課長島耕作


島耕作みたいですよね。

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阿川 山田さんが一番お好きな画家は誰なんですか?


フェルメールが好きですね。


阿川 フェルメールが急に日本で人気ですね。なんなんだこのムードは。


元から日本人はフェルメール好きですよ。
一貫して好きですよ。


阿川 暗さがいいのかな。


暗さっていうか、この静謐感っていうか、静かな感じ、
不思議な感じがするんですよ。なんか時が止まったような。


森永 私ね、フェルメールっていうと、この牛乳を壺から注いでるおばさんの絵、
   これよく新聞広告で、バランスがいいのはどの絵でしょうっていうのを選んで
   あなたの美術感覚をテストしますっていう


それ講談社フェーマススクールズのさ、広告でしょそれ。

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これはね、独特な光の感じ。これがね障子越しの光に似てるんですよ。
わりかし、陰影礼賛的なね、光なんですよ。
日本人に合うと思いますね。
そういう意味でいうと、印象派が日本で人気っていうのも
理由ないこともないなって思います。

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